Waterloo To Anywhere

Aki-hito2006-06-14


The Libertinesのフロントマン、カール・バラー率いるDirty Pretty Thingsの1stアルバム。

The Libertinesのもう1人のフロントマンであるピート・ドハーティー率いるBabyshamblesのアルバムから大分時期をズラしてのリリースとなる本作は僕にとっては期待と不安を抱かせる作品であったからなかなか手に取れずにいた作品だった。

というのもThe Libertinesの音を期待して聞いたBabyshamblesのアルバムは、音にだけ限定した部分の話だが、The Libertinesのメロディというよりはピート・ドハーティーのソロ作品というようなイメージ、ピートの精神面を前面に押し出したアルバムだったから。

そもそもThe Libertinesは今のところもう存在していないのだから、その音を追いかけている自分が駄目なのは重々承知なのだけど、でもやっぱりあの音を求めている自分が居るのは事実だから。

そんな思いを持って聞いたDirty Pretty Thingsの音は、「あぁ…カールだなぁ。」って思えるような音で安心した。

「Gin & Milk」のギターの重なる音も、決して器用じゃないけど感情を露にして歌うこの声も、矢継早に言葉を発するこのスタイルもあの頃と何も変わらないカールの姿を想像できる。

ゲイリーのタイトでダイナミズムに溢れたドラムも何一つ変わっちゃいない。

ただ違うのは隣にピートがいない事だけ、楽しそうに歌う掛け合いの声が聞こえないだけ。

それでもカールは歌う、パンキッシュなサウンドに自分の言葉をのせて歌う。

ナイーブで繊細な心を胸に秘めながら、躍動感に溢れた音を奏でながら歌う。

これはThe Libertinesに対するカールなりの決別を表しているのかとも思う。

インタビューを読む限りでは、まだまだThe Libertinesに対する想い、そしてピートに対する想いは簡単に表現できるようなものじゃないようだけど、それでもカールは前を向いて歌っている。

Babyshamblesの音を「陰」とするならば、Dirty Pretty Thingsの音は「陽」

ピートが「過去」を歌うのならば、カールは「未来」を歌う。

ピートとカール、双方の奏でる音は誰にも負けない音だと思うけれど、僕はカールの歌の方が好き。

弱さを見せながらも必死に生きようとするカールの音楽が最高に好きだ。

何時の日かまた二人で歌ってくれる事を願いながら、期待すべき新たなバンドの誕生を祝福したいと思う。